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【コロナ期間映画評論】The mist を鑑賞して

*まえがき

最近「The mist」という2007年のアメリカ公開のSFホラー映画。

今回は映画の感想あらすじと自分なりに感じたことを書いていこうと思う。

端的に言えば、極限状態における人間の本質が垣間見れる作品であると感じた。

 

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*あらすじ

主人公とその息子が隣町のスーパーに買い物をしに行くと、

スーパーに突如ある男が「霧には何かがいる!」と叫びながら店内に入ってくる。

いわく街には突如正体不明の「霧」が現れ、周りの人間を攫っていったそう。

 

それからスーパーの周りにも正体不明の「霧」が忍び寄り、

主人公を含め、スーパーにいた人々は疑心暗鬼になる。

「本当に何かが霧にいるのか」もしいるとしたら"それ"は何なのか。

その後停電したのでブレーカーを見に主人公と店員、清掃員たちが

ブレーカーのあるガレージの方へと向かう。

 

まず主人公は先に入ってガレージを確認していると、

シャッターに"何か"が攻撃してきた。

急いで周りの人間を呼び、確認するも、

周りの人間はどうもその"何か"の存在を信じようとせず、

あろうことかシャッターを開けて外を確認しようとする始末。

主人公は必死に止めようとするが、多数決でシャッターを開けることに。

しばらくするとタコの触手のようなものが若い店員を襲撃する。

急いで止めようとするが力が強すぎてどうにもならない。

どうにか触手を斧で切断し、辛うじてそれを撃退した彼らだったが、

若い店員はその触手に連れ去られてしまった。

 

店に戻って事態を必死に報告する主人公。

しかし、隣人の弁護士をはじめとして誰も聞く耳を持たない。

確かに、「触手が店員を連れ去った」なんて普段なら到底信じられない状況。

しかし、ガレージに確認しに行った店長は切られた触手を発見。

店の全員に"緊急事態"を宣言する。

 

それでも納得が行かない弁護士とその仲間たちは、

「外には何の危険も無い」と主人公の制止を無視して外にでる。

その後彼らがどうなったのかは映画では描かれていない。

しかし、私が思うに彼らは"霧"の中で殺されたと推察する。

主な理由は3つで①他人の意見を無視②みんな自己中③権威とか地位に固執

こういった集団は自壊していく宿命。

 

その夜スーパーは巨大な虫と鳥の襲撃に遭い、

危うく全員が死にかけるも、主人公らのとっさの機転で

「火」や銃火器を利用して撃退する。

しかし、被害も甚大で、虫に噛まれた店員は死亡し、

応戦した男も大やけどを負って死に体に。

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その日以降店内の勢力図は一変。

今まで個人個人で行動していたグループが、

聖書を信じている女性のもとに集まりだす。

というのも、襲撃の際、彼女だけは何故か

虫の襲撃を受けず、それゆえに信頼を得たからだ。

 

主人公グループはやけどを受けた男や病気の人たちのために、

外へ出て近くの薬局へと向かう。

 

薬局でうまく薬品集めが出来た彼らが帰ろうとすると、

妙な音が聞こえる。音のする方へ歩みを進めると、

なんと蜘蛛の巣に捕まった人間の大群が。。。

また、そこへ音に誘われた蜘蛛も集まってくる。

蜘蛛は糸で攻撃してくるが、この糸がただの糸では無い。

触れたものを熱で溶かすさながら劇薬のような代物。

この攻撃によって何人かの仲間が死亡するも、

主人公たちは何とかスーパーに帰還する。

 

すると、

スーパーでは聖書を信奉する彼女の一派が場を支配するようになっていた。

 

軍人の2人が居なくなったことを訝しく思った主人公たちは、

1人の軍人に問いただすもわからない様子。

店内を探してみると、そこには首を吊った軍人たちの姿。

先ほどの薬局の蜘蛛の巣で捕まっていた軍人が

「俺たちのせいでこうなった。」と言っていたことを思い出した主人公たちは、

軍人に「知っていることは全ては吐け!」と命令する。

すると彼は軍が生物を使った兵器を開発していたこと、

今回の事件は生物兵器が原因ではないか、ということを告白した。

そのことを知り、怒った清掃員の男は、

聖書グループの人々の前に彼を差し出し、

「今回の事件は彼ら軍人のせいだ」と彼を断罪し、

結果として外に出され、生贄にされることに。。。

 

彼に罪はあるのだろうか。

彼は「軍に勤めていただけ」で、今回の事件を主導した訳でも無ければ、

軍に勤めていた以上、上からの命令を断れるはずもない。

このシーンで彼が生贄にされたのは、第一に他の軍人たちが何も語らずに、

彼だけを残して自殺してしまったこと。第二に悪化していく状況の中で、

暴徒化していく人々を抑える規律が何も作用していなかった点にある。

作中の会話にもあったが、如何にアメリカのような発展した国においても

(整備された住環境、法律、規律、人々の倫理観がある前提)、

一度状況が混乱し、指揮系統を失い、法律や規律を失えば「文明的」な

私たちはすぐさま原始時代のような人間本来の欲求に駆られて行動してしまう。

このシーンではそんなことを考えさせられた。

 

その次の日の朝。

主人公一行はレジに隠しておいた食糧と共に

外へ出て車に乗って安全な場所まで避難することに。

しかし、聖書グループが彼らの動向を監視していたため、

彼ら見つかった挙句に子供を捕まえて生贄にしようとしてくる。

応戦していく彼らだったが多勢に無勢。

もうここまでかと思った矢先に店員が拳銃で聖書グループのリーダーを射殺。

リーダーを失った彼らはもう組織を成さない。

彼らは包囲を解き、主人公らは車で逃走した。

彼らは車で逃走を続けていたが、ガソリンが切れて万事休す。

拳銃を持っていた彼らは残った銃弾で自殺を図る。

しかし、弾が一発だけ足りずに主人公は1人残される形に。

「もうどうとでもなれ!」と車から出て怪物に自分を差し出す。

しかし、待てど暮らせど怪物たちの姿は現れない。

それどころか霧が晴れ始め、軍の車両と避難者たちの護送車が現れる。

 

長かった"霧"の恐怖は終わったのだ。

 

しかし、

彼は自分だけが生き残ってまったことに苦しみ、泣き崩れる。

 

ここで映画が終わります。

 

普段なら映画はハッピーエンドが多いですが、

今作のような考えさせられる結末も悪くありません。

 

*まとめ

いかがだったでしょうか。

極限の状況における人々の変化と本質が見えたのではないでしょうか。

今作では誰が"悪"で"善"なのかが明確に描写されていないことが興味深いです。

個人的に気になったのは、①結果的にスーパーに残った人たちが救出されたのか、

②最後のシーンで描かれていた森や生物の焼却シーン

人類の勝利を表しているのか、それともその逆なのか。

 

私個人の意見では、①はその大半が死亡したのでないかと推測。

というのも彼らの行動はリーダーによって統率されており、

リーダーが何か指示したことに対しては忠実ですが、

逆を言えば考えることを放棄している集団とも言えます。

リーダーの死後はおそらく軍人の彼を死に追いやった清掃員が、

リーダーシップを発揮してグループを指揮するものの、

(なぜなら他の構成員は考えずにリーダー的な存在に追随)

過激的な思考に走り、結局は人の粗探しをして、

元リーダーのように生贄を見つけて殺すことで信任を得るようになったでしょう。

まあ、これは全て推測ですが、リーダーが居らず先の見えない集団は

こうなっていくような気がします。

 

②に関しては、完全防護の服、装甲車、火炎放射器

これら全ての物が聖書グループが言っていたような"人間の罪"にあたる

ような人間の発明であり、罪そのものを表しているように見えました。

また、そういった"罪"を体現している物が自然を壊し、また束の間の休息を得た

後にまた生物開発や核開発などの"罪"を繰り返し、最終的には人類に死が訪れる。

最後のシーンはこんなことを連想させるような力がありました。

 

人間の本質とは何か。本当の窮地に陥った時に人はどうあるべきなのか。

自分は自身を持って理性的に、また公平な判断が出来るだろうか。

今作はこういったことを考えせてくれる映画でした。

 

次回のブログに続く。

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